お話しを聞いて心に浮かんだ景色を描こう。
豊かな麦畑で6わのカラスと農夫のいさかいがありました。
それで、どんなことが起きましたか。
6わのからす
レオ・レオニ
訳 谷川俊太郎
①バラバドゥールの おかのふもとの しずかなたにまで、
ひとりののうふが むぎばたけをたがやしていた。
とちはゆたかだし、はるのあめは やさしかった。
②くらしは もうしぶんなかった、
ちかくのきに 6わのうるさいからすが
すをつくってさえ いなければ。
③ちょうど むぎが みのるころになると、
からすは はたけにまいおりてきて
やわらかいむぎを ついばむのだった。
④のうふは からすをおいはらおうとする。
だが のうふがこやへひきあげると、
あっというまに からすはもどってくる。
おもいあぐねて のうふはかかしをたてた。
⑤むぎのあいだで ぼうをふりかざしている かかしをみて、
からすたちは こわくなった。
6わは きにあつまって どうしようかとかんがえた。
「おれたちが あいつを こわがらせてやるんだ!」
みんなは いった。「でも どうやって?」
⑥「はたけに ひをつけよう!」1わが さけんだ。
「だが それじゃおれたちの たべるものがなくなってしまう」
もう1わがいった。
いろんな いけんがでた。
とうとう みんなはおそろしい たこをつくることにきめた。
きのかわと はっぱをあつめて
かれらは ものすごいすがたの とりをつくった。
⑦あくるあさ、かれらは はたけのうえに たこをあげた。
かかしは ぴくりともしなかったが、
のうふは ひどくこわがった。
こやへにげこんで かぎをかけた。
「もっと おそろしい かかしをたててやる」
のうふは いった。
⑧すぐに りょうてに つるぎをふりかざした
おおきなかかしが はたけにたった。
いかりくるったくちから うめきごえがきこえそう。
「これで いい」
のうふは いった。
⑨だが このあたらしい かいぶつをみると、
からすたちは もっとたくさんの きのかわとはっぱをあつめ、
もっとおおきく もっとおそろしい たこをつくって、
はたけのうえを いったりきたりさせた。
のうふは おそろしさのあまり こやからでることもできなかった。
⑩ふるい きのうろから 1わのふくろうが
いちぶしじゅうをみていた。
あたまをふりながら ふくろうはおもった。
「のうふと からすと、ばかなのは どっちかね」
⑪ほったらかされて むぎがしおれていくのをみて
ふくろうは のうふとはなそうときめた。
「からすと なかなおりしてはどうかね?」
ふくろうは いった。
「もう ておくれだ。」
おこって のうふはいった。
「はなしあいに ておくれはないよ」
ふくろうは いった。
⑫つぎに ふくろうはからすに あいにいった。
「どうすりゃ いいんだ?」
むぎが だめになりそうだときいて
とほうにくれ、からすたちはたずねた。
「いって はなしあうんだ。」
ふくろうは いった。
「ことばには まほうの ちからが ある。」
⑬のうふとからすは ふくろうのすのまえで
えんえんと はなしあった。
はじめはどなりあい、やがてしずかに、
そして しまいにはむかしからの ともだちのように。
「にぎやかな なきごえがきけなくて さびしかったよ」
のうふは いった。
「あんたの むぎがこいしかったよ!」
からすたちはいった。
そして いっしょに おおわらいした。
「ふくろうに おれいを いわなきゃ、おや、どこに いったんだ?」
すは からっぽだった。
⑭はたけにいってみると、あのおおきなかかしがたっていた。
でも どこかちがっている。
おそろしいしかめっつらが たのしそうなえがおになっている。
「なにが おこったんだい?」
みんなは たずねた。
「ことばの まほうさ」
ふくろうは いった。