ものがたりを聞いて、心に浮かんだ景色をえがく。読んだのはレオ・レオニ作のかたつむりが登場するお話し。
キャベツ畑のかたつむりたちはどんなでしたか。
せかいいち おおきなうち
りこうになった かたつむりのはなし
レオ・レオニ 訳:谷川俊太郎
(あとりえこもで改編)
①おいしそうな キャベツにかたつむりたちが すんでいた。
せなかに うちを しょったかたつむりたちは
はっぱからはっぱへ、ごはんのたびにひっこし。
②あるひ ちびかたつむりが おとうさんに言った。
「ぼく おとなになったら、せかいいち おおきなうちがほしいな。」
りこうもののおとうさんは「うどの たいぼく。」
とこたえて こんなはなしをはじめた。
むかし、ちょうどおまえみたいな ちびかたつむりがいて おとうさんに言った。
「ぼく おとなに なったら、せかいいち おおきなうちが ほしいな。」
「うどの たいぼく。」とおとうさんは こたえた。
「じゃまに ならないように、うちは かるくしとくんだよ。」
③けれど、ちびかたつむりは きかなかった。
はっぱの かげに かくれて、からだをのばしたり、
ちぢめたり、ねじったり。
そして、とうとう、うちを おおきくする ほうほうを はっけんした。
④うちは どんどん おおきくなった。みんなはいった。
「きみの うちは せかいいちだよ。」
⑤ちびかたつむりは いつでもからだを のばしたり、ちぢめたり、
ねじったりしていたので
うちは とうとうメロンみたいに おおきくなった。
⑥おまけに、しっぽを ぷるぷるふったら、
つのかざりまでくっついた。
⑦そして、もっとからだを動かしたり、いっしょうけんめい おいのりもしたら、
きれいなもようも くっついた。
これこそ せかいいちおおきくて、せかいいち うつくしいうち。
ちびかたつむりは はなたかだか。
⑧ちょうちょうたちが とんできた。
「みて!おとぎの おしろよ!」
「ちがうよ、サーカスが きたんだ!」
だれも、かたつむりの うちだなんて、かんがえてもみない。
⑨かえるのいっかが とおりかかって、めをまんまるくした。
あとで いとこたちにはなすには、
「まったく びっくりぎょうてんさ。ただの かたつむりのくせに、
バースデーケーキみたいな うちにすんでるんだ。」
⑩かたつむりたちは、キャベツの茎だけ残してはっぱを
ぜんぶたべつくした あるひ、べつの キャベツへと ひっこした。
ところが かわいそうに、ちびかたつむりは うごけなかった。
うちが あんまりおもすぎて。
⑪ひとりぼっちで たべものもなくて、
ちびかたつむりは やせほそり、やがてきえてしまった。
うちだけを のこして。
うちも すこしずつこわれていき、
とうとう あとには なにものこらなかった……
⑫おとうさんのおはなしが おわると、ちびかたつむりの めはなみだでいっぱい。
けれど、やがて じぶんの うちの ことを おもいだした。
「ちいさくしとこう。」と、ちびかたつむりは おもった。
「おとなになったら、すきな ところへいけるように。」
⑬そうして あるひ、こころもかるく、みもかるく、ちびかたつむりはでかけた。
そよかぜに きのははそよぎ、
じめんにはすいしょうが あさひにかがやいていた。
みずたまもようの きのこ、
レースのような しだのはかげのまつぼっくり。
やまばとのたまごみたいな まるくて すべすべのこいし、
やわらかな きのめは、あさつゆで つめたくあまかった。
ちびかたつむりは とてもしあわせ。
⑭つきひはながれ、ちびかたつむりは おおきくなった。
だが、ちいさいとき おとうさんから きいたはなしは、けっしてわすれなかった。
そして だれかが、「どうして きみのうちは そんなにちいさいの?」ときくと、
きまって はなしてきかせるのだった。
<せかいいち おおきな うち>のはなしを。